読む信心-両方の願いが調う道を

 丸山博子さん(55)は、金光教の祭典音楽である典楽(てんがく)の楽人として琴のご用を務め、また、在住する関東地方では、琴の指導員として活躍しています。【金光新聞】


 典楽のすそ野が広がることを願って熱心に指導に当たってきた博子さんは、年に一度、金光教本部(岡山県浅口市)で開かれる指導員研修会へ参加することを、毎年楽しみにしています。全国各地の指導員に会えるのも楽しみの一つですが、技術を高めるにも重要な研修で、これまで欠かさず参加してきました。

 ところが、今年の研修会が、図らずも、息子の真行さん(24)の教員採用試験日と重なってしまったのです。

 真行さんはこれまで二度、地元公立高校の採用試験に挑戦してきましたが、採用枠が少ないこともあり、残念な結果に終わっていました。それだけに、「今年こそ」と意気込んで一年間頑張ってきた息子のことを思うと、今回ばかりは研修会への参加を見合わせて、母親として、試験当日は笑顔で息子を送り出してやりたいという思いとの間で、どうすべきか迷いました。

 どちらを優先するか決心できずにいた博子さんは、教会でそのことをお届けしました。すると、教会の先生は、「両方の願いが調う道を願いましょう」と言ったのです。

 その言葉に博子さんは、「そんなことができるのかしら」と驚きながらも、それぞれが立ち行くよう、お繰り合わせを願いました。

 その日、博子さんは、夫の薫さんにどうしたらいいのか、迷っていることを話しました。「皆さんにお琴を教えていく上で、研修会に参加して技術を高めることは、とても大切だけど、真行の試験も人生を決める重要なものだし、どうしたらいいかしら」。

 すると、薫さんは、「おまえと結婚して初めて、金光教のことを知ったが、おまえの信心に基づいた生き方に支えられることは多い。真行がこうして元気に成長したのも、おまえの信心の賜物だと思っている。真行のことは大丈夫だから、研修会に参加したらいい」と応えてくれたのです。

 その言葉を、博子さんは涙が出るほどうれしく感じました。博子さんは、神様に一切をお任せして、研修会への参加を決めました。

 研修会に出発する日、駅まで見送ってくれたのは、真行さんでした。翌日に試験を控えた真行さんは、その足で教会に参拝し、試験と母親の研修会の無事をお届けしました。そこには、「子どものことは親が頼み、親のことは子が頼み」という親子頼み合いの信心がありました。

 翌朝、寝台列車で金光に到着した博子さんは、本部広前で年老いた母親の手を引く親子連れと出会いました。手を取り合って参拝するその姿を見て、「家族中親切にし合い、信心をすれば、心がそろうようになり、みなおかげを受けられる。親子でも、心が一つにならなければおかげにならない」という教祖様のみ教えとともに、快く自分を送り出してくれた夫と息子への感謝の気持ちが込み上げてきたのです。

 「典楽の技術とともに、信心も磨いてきてください」。研修会への参加に際して、教会の先生から掛けられた言葉を、博子さんはあらためてかみしめました。

 ちなみに、真行さんは見事、試験に合格しました。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。


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読む信心-Update:2008/08/12

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