読む信心-信心して おかげを

 雪のちらつく寒い夜、安男さん(50)は教会の信心勉強会に、初めて参加しました。安男さんの家は、祖父母の代から金光教にご縁を得ています。【金光新聞】


 どんな時も神様を第一にしてきた両親の姿を見て育った安男さんは、幼いころから少年少女会活動に参加し、現在は信徒の中心となって教会のご用に励んでいます。

 ところが最近、安男さんは心にわだかまりを感じるようになっていました。それは昨年、父親が亡くなって家督を相続したことに伴い、「両親の信心を自分が受け継がなければならない」という気持ちが強くなる中で生まれてきた感情でした。「とても両親のようなまねはできない」。その思いは、日を追うごとに大きくなっていたのです。その思いが、安男さんを信心勉強会へと向かわせました。

 その日、参加した勉強会で、初めて教祖様のご理解についてゆっくりと話を聞いた安男さんは、不思議と心が軽くなっていくのを感じました。そして、心にわだかまる思いは、神様に何とかしてもらおうと思い立ち、翌朝から日参に取り組み始めたのです。

 参拝を始めて十日目のことでした。いつものようにお結界でお届けをしていた安男さんに、母親(72)が交通事故を起こしたという知らせが入りました。

 慌てて現場に駆けつけると、大破した車が道路からがけ下へと落下寸前の状態で停止していました。しかし、運転していた母親には、かすり傷一つなかったのです。

 母親の話では、凍結した橋の上で車がスリップした後、操作不能になり、車ごと宙に浮いたようだったということでした。安男さんは、危機一髪の状況に震えながらも、「大難を小難にまつりかえて頂いた!」という思いがわき上がってきて、すぐに教会へ引き返してお礼のお届けをしました。

 教会の先生は、「日参していたのにどうして、と思うかもしれませんが、日々の参拝も、神様がさせてくださっているのです。あなたが日参を始めたのも、あなたの身の上を思い、何とか助けようと働き掛けてくださる親神様のおぼしめしだったのでしょう。そのことにまずお礼を申していきましょう。神様は、大きな事故を二度に分けることで、小難にまつりかえてくださったのかもしれませんね」と言われたのです。

 その言葉に、安男さんはハッとしました。実は一カ月前、娘さんも同じような事故を起こしていたのです。その時も娘さんは無傷でしたが、安男さんの心には、「信心をしているのに、なぜこんなことに…」という思いが残ったのでした。

 安男さんは、先生の言葉を通して、一つのことに気が付きました。
 「これまでは、『氏子、信心しておかげを受けよ』といわれる、『信心して』が抜けていました。父を見習い、教会のご用を熱心にさせて頂くことが、手厚い信心であると思っていましたが、それは形だけのことでした。父の信心を受け継ぎながらも、私は私で生活の中で、神様のお働きに気付き、お礼を申していくことが要る。それが、神様を本当に頂いていくことではないかと思うのです」と、安男さんは言います。

 どうすれば自分の生き方が信心生活になるのか。安男さんは今、自分なりに神様に心を向けるけいこをしながら、日々の生活に取り組んでいます。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。


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読む信心-Update:2008/07/31

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