●先生のおはなし
 「神様プロデュース」


金光教不知火教会
池本ひろ江先生


 わが家には、いつの間にか物置部屋になってしまった部屋がありました。忙しさを理由に、どんどん荷物は積み重ねられ、開かずの間になっていました。ところが、めいとおいが初めて子どもたち3人だけで、泊まりに来たいと連絡があり、可愛いめいっ子たちのため、その部屋を片付けることにしました。
 整理も中盤に差し掛かった頃、夫からラインが入りました。
 「明日、友人2人を呼んで家で飲みたいけどいいかな?」
 私は、友人の名前を見て、頭の中で瞬時に計算しました。気心知れた友人だし、気も使わなくていい。導き出された答えは、「いつものご飯に、ちょい足しぐらいでいっか!」。気持ち良く「いいよー!」とハートの絵文字も付けて返信しました。
 当日の朝、夫が私の反応をうかがうように、「やっぱり家族も連れてきたいって言っているけど…大丈夫?」と恐る恐る聞いてきました。計画が崩されることにいら立った私は、「大丈夫なわけないやん! 奥さんや子どもたちがいるなら、メニューも量も変更せなんやろ! 料理を作る私に相談もなく、勝手に決めるなんて! ありえんやろ!」。私のいら立ちに慌てた夫は、「だから、今相談してるんだけど」「今さら奥さんたちも来たいって言ってるのを断るわけにはいかんやろ!」「大丈夫だよ。断るよ」「いい。私が嫌なやつになるだけやもん!」と、不毛な言い合いの末、気まずい雰囲気の中、夫は仕事に出掛けていきました。
 一人になり、「あー、またやってしまった。何で私は、こんな言い方しかできないんだろう」と、自分の心を見詰めていると、ふと、もう一つの考えが浮かびました。
 「いつも教会の先生が『起きてくることは、神様のお働き』とおっしゃるけど、これもそうなのかな」
 私がお参りしている金光教の教会の先生は、「生活の中で起きてくる、自分にとって都合が良いことも悪いことも、あなたを幸せに導く神様のお働きなのだから、大切に受け止めて、受け入れてごらん」と常々教えてくださいます。先生の顔が浮かび、ひとまず「受け止める」ということに心の向きを変えてみました。
 メニューを考え直しながら、引き続き部屋の片付けをしていると、古いダンボールが出てきました。開けてみると、私の子どもたちが使っていた積み木のおもちゃが出てきました。妹の子どもが生まれた時に譲っていましたが、使わなくなったので、「お姉ちゃんの家は、お客さん多いし、子どもが遊びにきた時に使ったら?」と、わが家に戻ってきていた物でした。「友人の子どもたちのおもちゃに、ちょうどいいやん!」。このタイミングで見付けたことに、心が少しウキウキしてきました。片付けも予想以上にはかどり、すっきりとした元の部屋に戻りました。
 冷蔵庫を開けてみると、数日前に頂いたお肉に目が止まり、開いてみるとひき肉でした。大人にはミートローフ、子どもには煮込みハンバーグを作ろうとひらめきました。メインのメニューが決まり、食事の支度に取り掛かろうとすると、遊びに行っていた大学生の長女が予定変更で帰ってきました。思い掛けない助っ人登場に、さらに心が弾み、ウキウキ気分で準備ができました。
 予定より仕事が早く片付いた夫がひょっこり帰宅。朝とは別人のようなご機嫌の私に驚いていました。開かずの部屋から出てきた懐かしい積み木を見せながら、「受け止める」ということに心の向きを変えてからの出来事を話しました。「朝は、きつい言い方してごめんね」「こっちこそ、心配りが足りなくてごめん」。仲直りもできたところに、友人たちが集まってきました。
 心からの笑顔で友人家族を迎えることができ、楽しいひと時を過ごしました。子どもたちもおもちゃに夢中で、ママさんたちとゆっくり話をすることもできました。子どもたちに作った煮込みハンバーグも好評で、いつも食事に集中できずしっかり食べない子も、たくさん食べてくれたようで、食事の時間が毎回憂鬱(ゆううつ)になるというママさんも喜んでくれました。子どもがジュースをこぼして着替える時や、おむつを替える時も、慌てることなく、片付けたばかりのすっきりした部屋に通すこともできました。
 私は、友人一家が喜んで帰ったあと、しみじみと「神様にプロデュースしてもらった2日間だったんだなー」と感じていました。ずぼらな性格の私をお見通しの神様が、めいとおいを使ってやる気のスイッチを押してくれて、部屋を片付けたことも、おもちゃを見付けたことも、数日前に頂いたお肉も、娘が帰ってきたことも、友人たちが来る前に夫と仲直りできたことも、全てが神様が準備してくださっていたもの。もし、私の考えで友人の希望を断っていたとしたら、夫と険悪な模様になり、友人にも嫌な思いをさせていたかもしれません。何より、私の心に「ありがたい」という幸せな気持ちは湧いてこなかったと思いました。
 自分の計画や考えを壊されても、私を幸せに導いてくれる神様のお働きとして受け止め、受け入れていくと、素晴らしい世界が用意されていること。自分の考えに固執せず、しなやかな心で生きていくほうが、思い掛けない喜びや楽しみが用意されていることを、神様は友人家族を通して私に教えてくださいました。
 心の持ち方を変えると、見え方が変わります。これからも、神様プロデュースに身を委ねて、しなやかな心で人生を喜び楽しんで生きたいと思います。

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