読む信心-辛い経験をバネに次へ

 二十歳になった美咲さん。笑顔を絶やさず、何事にも積極的に取り組む女性に成長しました。【金光新聞】



 そんな彼女に、いじめに悩み苦しんだ日々があったとは、今の様子からはうかがえません。

 いじめは、小学3年生から始まりました。この時、美咲さんはいじめられていることを先生に話し、先生を交えていじめをしている相手と話し合い、表面上は収まったように見えました。しかし、実際は陰湿化して続いたのでした。

 中学生になってからも、持ち物を隠されたり、意図的に仲間外れにされて、親しかった友達も次第に離れていきました。美咲さんは先生に相談することもせず、両親にも言わず、一人で我慢の登校を重ねていきました。やがて、吐き気や目まい、震えが起こり、生理も止まって、ついには動けなくなりました。この段階になって、両親はいじめが続いていたことを知ったのです。

 担任の先生は、このことについてクラスで話し合い、いじめていた生徒たちに二度といじめないよう指導しました。その上で、美咲さんに登校を促しましたが、誰も信用することができないほど、美咲さんの心の傷は深く、自殺を考えたほどでした。

 そんな彼女に養護の先生は、公民館のふれあい教室(不登校生徒が心を癒やし学習する場)へ通ってみたらどうかと勧めました。一カ月ほど自宅で療養し、心身も安定してきたことから、美咲さんはふれあい教室へ行ってみることにしました。

 ところが、いざ出掛けてみると、通学途中、人から敵意のまなざしで見られているのではないかという恐怖心に襲われ、教室に着くと体に震えが来て、涙があふれ出たのです。

 そんな美咲さんを、この教室の葉子先生(45)は包み込むように迎え入れました。

 美咲さんは葉子先生の人柄に安心感を覚え、つらかったこれまでのことを少しずつ話し始めました。葉子先生もまた、彼女の思いをしっかり受け止めていきました。

 葉子先生はカウンセリングを通して、美咲さんの心の痛みを癒やす努力を続けましたが、その根底には金光教の信心がありました。美咲さんの心の叫びにしっかり耳を傾け、彼女だけでなく、いじめていた生徒の立ち行きも教会で祈りました。

 教室では、「両親から授かった命を大切にして、自分を好きになろうね」「人のお役に立つような生き方をしようね。いじめた人のことも祈ってあげてね」と、繰り返し伝えたのです。

 3年生になっても、学校への恐怖心は消えませんでしたが、美咲さんの中に少しずつ意欲が生まれ、看護師を目指してふれあい教室で勉強に取り組み始めました。

 彼女なりに頑張ったものの、結果は望んだようにはなりませんでした。でも、彼女は決して自暴自棄になったり、あきらめることはしませんでした。むしろ、自分の生きる道を切り開いていこうとする意欲は強くなっていきました。また、それまで苦手だった、自分の思いを人に伝えることができるようになっていったのです。

 その後、彼女は通信制高校に進み、卒業すると地元で就職しました。

 これから先、美咲さんにどんな人生が待っているのかは分かりませんが、つらかった経験をバネに、しっかり歩んでいってくれると、葉子先生は思っています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。


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読む信心-Update:2008/11/13

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