酒屋を営む片岡幸子さん(68)は、外出する時、決まってお気に入りの手提げ袋で出掛けます。その袋は、教会の初代の先生が亡くなられて50年という節目の年に、しのび草として頂いた品物でした。【金光新聞】
酒屋を営む片岡幸子さん(68)は、外出する時、決まってお気に入りの手提げ袋で出掛けます。その袋は、教会の初代の先生が亡くなられて50年という節目の年に、しのび草として頂いた品物でした。【金光新聞】
ある日、自転車で外出しようとペダルに足をかけた幸子さんは、ふと用事を思い出し、自転車を店先に止めて中に入りました。用事を済ませて戻った時、かごの中に置いていた手提げ袋が消えていたのです。その間、数十秒という、わずかな間の出来事でした。
すぐに教会の先生に事の次第をお届けし、警察や銀行に被害届を出しました。袋には財布や通帳、キャッシュカードなどの貴重品が入っていました。
とにかく、警察からの連絡を待つことになりましたが、いつまでたっても、何の音さたもありません。毎日のように、「手提げ袋が出てきますように」と、教会の先生にお届けしながら待ちましたが、その後も待てど暮らせど、何の連絡もありませんでした。
それから月日は流れ、半ばあきらめていたある日のこと、幸子さんのもとに警察から電話が入りました。
「先ほど、家宅侵入罪で二人組の窃盗犯を捕まえ、余罪を追及したところ、お宅の前で手提げ袋を盗んだことを自供したんです。これからお宅に伺ってもよろしいですか」。警察からの突然の連絡に、幸子さんはびっくりしました。盗難からすでに5カ月がたった日のことでした。
警察官の話では、あの日、犯人たちは町中をぶらついていたところ、酒屋の前に一台の自転車が止まっているのが目に留まり、しかもかごの中には赤い手提げ袋が置かれてあったことから、盗んで走り去った、ということでした。
こうして、幸子さんの手元に5カ月ぶりに手提げ袋が返ってきました。幸い、盗まれたのは、財布の中にあった少しの現金だけで、通帳やキャッシュカードは、そのままの状態で残っていました。
幸子さんは盗難に遭った直後、「どうしてこんなことに…」と、内心、不足の気持ちを持っていました。そんな中で先生は、「盗賊の難を受けた時は、大の難を小の難で逃してくださったと神にお礼を言い、また、盗賊が本心に立ち返り正業に就くようにと、神に願ってやれ」という教祖様のみ教えや、直信の先生が盗難に遭った信者に語ったとされる、次のようなみ教えを幸子さんに語り伝えていました。
そのみ教えとは、「こうした場合、三つの受け方がある。一つは、『信心していたのに、どうしてこういうことになるのか』という受け方で、これでは信心にはならない。二つ目は、『自分の不行き届き、不注意でそういうことになった』という受け方。そして三つ目は、『このことを通して家のめぐり合わせを変えて頂いた』と喜べる受け方。三番目が良い」という内容でした。
先生の話を聞きながら、幸子さんは自分の不注意に思いを致し、犯人の更生を願うように、心の向きを変えるよう努めました。
それにしても不思議なのは、捕まった時に証拠となってしまう危険があるにもかかわらず、なぜ犯人は5カ月もの間、幸子さんの手提げ袋を捨てずにいたのでしょう。幸子さんには、初代の先生が、みたまながらにお働きくださったと思えてなりませんでした。
※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。
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読む信心-Update:2008/09/24 |
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