昨春から、看護師として病院に勤務している平野紀子さん(20)は、参拝している教会の先生に、「今日はこれだけの方のおしめを交換させて頂きました。...【金光新聞】
昨春から、看護師として病院に勤務している平野紀子さん(20)は、参拝している教会の先生に、「今日はこれだけの方のおしめを交換させて頂きました。...【金光新聞】
無事、仕事を終えさせて頂き、ありがとうございます」と、その日のことを事細かくお届けするのが、日課です。
そんな彼女には、看護学校時代に、病院実習で経験した忘れられないエピソードがあります。
それは、先輩の看護師と大腸がんの手術を受ける木村さんを担当した時のことです。初めてのことで緊張しながら、人工肛門の装着脱の指導をはじめ、手術に向けた諸準備を木村さんと一緒にしてきました。
そして、いよいよ手術当日、先に行われていた手術が予定より早く終わったことから、時間を早めて木村さんの手術が行われることになったのです。
ところがこの時、先輩の看護師が、事務的な口調で手術室に行くよう促してしまい、手術を前に少し神経質になっていた木村さんは、「わしは、もう手術を受けん。いったい、このわしを何だと思っているんだ」と、声を荒げて手術を拒んだのです。
木村さんは、人工肛門になる不安を抱えながら、手術への心の準備をしている最中に、まるで物でも扱うかのような接し方をされたと感じて、機嫌を悪くしてしまったのでした。
他の看護師のフォローもあって、その場は何とか治まり、手術を受けてもらうことができましたが、初めての実習で、いきなりこのような場面に出くわした紀子さんは、体がガクガクと震え、これから木村さんにどう接していけば良いのか分からなくなってしまいました。
一時は不安に襲われた紀子さんでしたが、しばらくすると、落ち着きを取り戻しました。そして、「看護師になるためには、心から患者さんのお世話をさせて頂くという気持ちでなければいけませんよ」という、教会の先生の言葉を思い出し、無事に手術を終え、部屋に戻った木村さんを、神様からお預かりした患者さんと受け止め、紀子さんは夢中で看護しました。
それから3週間が過ぎて、木村さんの退院の日が近づいたころ、一足先に紀子さんが実習を終える日がやってきました。
紀子さんがお別れのあいさつに行くと、木村さんは「これを後から読んで」と、一通の手紙を手渡しました。
その手紙には、「平野紀子様 入院中は、心温まる看護をして頂き、本当にありがとうございました。あなたは患者の心まで癒やしてくれる優しさと笑顔の持ち主です。私自身、この病気にも悩むことなく、あまり痛まず経過も良好で、本日ドクターから退院の許可が出ました。平野さんにはお世話になりましたが、何も返すものがありません。ただ感謝致すのみです。あなたは立派な看護師になられることは間違いありませんが、どうか今のままの優しさと笑顔で、目標に向かって精進されますよう祈っています。本当にありがとう」と書かれていました。
紀子さんは早速、教会に参拝し、先生に「こんなお手紙を頂けたことを、神様にお礼申してください」と、お届けしました。先生とご祈念をしていると、実習中の出来事が次々と思い出され、涙があふれてきました。
紀子さんは今、この手紙を心の糧として、毎日、看護師の仕事に励んでいます。
※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。
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読む信心-Update:2008/09/04 |
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