●先生のおはなし
 「私にできるでしょうか」


金光教豊川教会
今泉明先生


(ナレ)おはようございます。パーソナリティの岩ア弥生です。
 早速ですが、今日は仕事の話を聞いていただきます。仕事をしていれば、誰かに認められ、やりがいを感じることもありますし、反対に、思うようにいかず、苦しくなって逃げ出したくなることもあるでしょう。今日のお話は、希望を持って転職してみたものの、なかなか思うようにいかず、悩みを持って教会に参拝した人のお話です。愛知県、金光教豊川教会、今泉明先生のお話で、「私にできるでしょうか」。

(本文)私の奉仕している教会に参拝している晴樹さんは、4年前、今まで勤めていた会社を辞めて転職することにしました。彼は、当時29歳。今までの会社では、これからも非正規社員のままであるということから、転職の決断をしました。
 大手自動車メーカーに、まずは期間工として一定の期間働くことになりました。新しい会社では、早ければ1年で正社員の試験が受けられるということでした。出勤前には教会へ参拝し、その日の仕事が無事に勤まりますように、そして正社員になれますようにと祈念していました。
 実際に仕事に行くようになると、段々と最初の頃の元気がなくなっていきました。1カ月程経って、彼が参拝した時、「先生、昨日はさすがに落ち込みました。もう会社を辞めようとさえ思いました」と元気なく言う彼に、「何があったのですか」と聞きますと、「仕事を教えてくれている上司が、いつもとても厳しいのですが、昨日は『何度失敗するのだ。何度教えたらいいんだ』と怒鳴られてしまいました」ということでした。
 2日後、彼は、会社の帰りに参拝して、「先生、とてもあの会社に勤めることはできません。もう辞めたいと思います」と言うのです。「どうしたのですか」と聞きますと、彼は、車の塗装のために必要なテープを貼る担当なのですが、その日、テープを貼り終えた時に、いつもの上司が来て、その貼ったテープを見るなり、「何だこれは! やり直しだ」と言って、そのテープを全部剥がしてしまったそうです。彼はびっくりして、しばらく呆然としていますと、「何をボーッとしているんだ。すぐにやり直せ」とまた怒鳴られてしまったということでした。全く自信をなくしてしまった彼に、私は、しばらくは何も言うことができませんでしたが、神様に祈りながらこう言わせていただきました。「あなたが怒鳴られたことは、とてもつらい事です。しかし、少し見方を変えてみますと、その上司は、あなたを思い、あなたに何とか一日も早く仕事を覚えてほしいと、ついつい強い口調になってしまったのではないでしょうか。これからは、その思いをくみ取って、強く何かを言われた時には、叱られたとは思わずに、私のことを思いやって教えてくださったと受け止めてみてはどうでしょうか。そして、教えてくださってありがとうございますと、言葉で、態度で表してみてはどうでしょうか。今日から神様に、上司の指導を心からありがたく受け止めさせてくださいと祈り、取り組んでください」と、そこまで私が言いますと、終始うつむいていた彼は、私を見て、「自分にそうしたことができるでしょうか」と言いましたので、「自分でするのではなく、神様にお祈りして、神様と共にさせていただくという思いが大切です」と言わせていただきました。彼は、その日、いつもより長い時間、お祈りをしていました。それから彼は、今まで以上に神様に祈り、神様と共にという思いで仕事をしました。
 1週間後、彼は、にこにこして参拝し、「今日、いつもの上司が、私の仕事を見て、だいぶ上達したなと言って褒めてくれました。そして、君は正社員になりたいのだろう。全面的に協力するからと言ってくれました」ということでした。
 1年後、上司から正社員の登用試験を受けるように言われた彼は、入社して1年で正社員になることができました。同じ塗装の職場から、何十人も試験を受けたそうですが、合格したのは彼一人だったそうです。私が、「よく頑張りましたね」と言いますと、彼は、「ありがとうございます。全て神様のおかげです」と言いました。もう正社員になってから3年になります。彼は、仕事前に教会に参拝し、「どうぞ、仕事に手違いがありませんように。心を込めて仕事ができますように。また職場の皆さんが、どうぞけがなく無事に仕事ができますように」と一心に祈り、神様と共に仕事をさせていただきますという思いで、今日も元気に勤めています。

(ナレ)いかがでしたか。
 職場で、理不尽なことを言われたり、不当な扱いをされたら、会社を辞めることも選択肢の一つだと思います。晴樹さんの場合、辞めたいと思うほどのつらさや悩みをじっくり聞いてくださる先生がいました。先生が、つらいことの中にも意味があることを示してくださったおかげで、晴樹さんは、その中に光を見いだすことができたのです。その光を目指して、「神様と共に」という思いで仕事をしていくうちに、思いもよらない展開になっていきました。晴樹さん、本当に良かったですね。

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