●命の誕生〜子を持って知る親の恩〜

金光教本部
金光浩道


 11年前に長男を授かった時の、忘れられない話をさせていただきます。
 結婚して間もなく、妻の妊娠が分かり、家族一同で大喜びしていました。ちょうどその頃、3日間の予定で妻が里帰りしたのですが、激しいつわりが始まり、自宅に戻ってくるのが難しくなりました。その上、出血が起こり、病院で診てもらうと、「心拍もないし、胎児も見えないから、おそらく流産です」と告げられました。
 突然の宣告、なお治まらない吐き気に、どうしてもあきらめ切れず、3日後に大きな病院で検査をしてもらいました。すると、「おめでとうございます。赤ちゃんの心拍が取れましたよ」と、おなかの中の子どもは無事だったことが分かりました。
 再び大喜びしたものの、激しいつわりは依然と続き、妻は心身共に疲れ切っていました。何を食べても全て吐き出してしまうので、体が飢餓状態になり、そのまま実家近くの病院に即入院となりました。
 妻は、おなかの中で日々成長する我が子へ思いが向けられず、ただただ妊娠生活が早く終わらないかと待ちわびる日々。あまりのつらさに、「もうやめたい! もう無理!」と何度も弱音を吐きました。結局、3日間の里帰りが、3カ月も滞在することになりました。
 実家から自宅に戻っても、次から次へと試練は続きました。普通4、5カ月で治まると言われるつわりも分娩の直前まで続き、100人に1人程度の重度のつわりと診断されました。
 さらに、妊娠8カ月の検診では、子宮の入り口である子宮頚部の長さが短くなっていると言われました。ここが短くなると、子宮の入り口が自然に開いてきてしまい、早産の恐れがあるので、入院しなければいけないと言われました。しかも、退院のめどはなく、最悪は出産まで入院になるかもしれないという説明でした。流産宣告に始まり、治まらないつわり、加えて今度は早産の危険を言い渡されたのです。
 入院中の妻は、早産を避けるために、ただただ横になっていなければならない生活でした。私は仕事が終わると毎日病院へ行き、病室で一緒に夕食を食べました。それが妻にとって入院中の唯一の楽しみだったと言っていました。しかし、つわりの重さに輪をかけるように、子宮の収縮を抑える点滴の副作用でさらに気分が悪くなり、毎日毎日トイレと向かい合う日々で、そばに付き添う私にとっても本当につらいものでした。
 こんなに大変な思いをしたからという訳ではないのでしょうが、出産はとてもスムーズに進み、安産で長男を授かりました。結婚したら妊娠して子どもが生まれるというのはごく当たり前のように思っていましたが、当たり前のことなど何一つないんだなと、思い知らされた経験でした。
 しかし、長男誕生の喜びもつかの間、さらなる試練が待ち受けていたのです。
 生まれてすぐに病院の先生から、「赤ちゃんの食欲がないし、体の循環が悪い」と言われました。
 確かに、お乳やミルクもなかなか飲まないし、「何だか元気がないなぁ」とは思っていたのです。結局、先生から、「集中治療室に入ります」と言われました。生まれて2日目のことでした。 保育器に入った長男は、体の循環が悪いので、おなかのガスを出しやすくするために、鼻から管を通されていました。さらに、栄養は点滴でしか取れないため、腕には点滴の針が刺さっていました。
 看護師さんからは、「これが赤ちゃんにとっては最善なんですよ。一番楽な状態ですから」と言われました。しかし、生まれて2日目の小さな我が子の痛々しい姿を見て、妻と共に涙が止まりませんでした。そんな私たちに、看護師さんがティッシュを持ってきてくれました。「あー、恥ずかしいな」とも思いつつ、「何とか元気になってほしい。出来ることなら代わってあげたい」と必死に思いながら我が子を見つめていたその時、ハッと気付かされたことがあります。それは、「私の両親も、これほどまでの慈愛をもって、私を育ててくれたのか」ということでした。
 これは、ガツンと体の芯にたたき付けられたように感じました。今まで親の恩も分からず、あたかも自分の力で生まれて、自分の力で生きてきたように、ずいぶん好き勝手してきたものだと思わされました。
 長男の治療は続き、妻の方が先に退院しました。毎日妻と2人で病院にいる長男に会いに行きました。だんだんと病状は回復し、1週間ほどで退院しました。初めて親子3人で家に戻った時には、私の両親はじめ家族が総出で迎えてくれました。我が家で長男を胸に抱いた時、その日を迎えるまでのいろんな出来事が思い出され、本当に感無量でした。
 「子を持って知る親の恩」といいますが、頭で分かっているのと、自分の体験から本当に体の芯に感じて分かるのとでは、こんなに違うのかと痛感しました。
 一つの命が誕生することの尊さ、当たり前のことなど何一つないということ、そして親の恩がどれだけ大きいものかを、妻の妊娠、出産を通して分からせてもらいました。こうして生まれてきた長男は現在11歳。毎日元気に過ごしています。
 日々の生活ではいろいろなことが起こってきますが、いつも感謝の気持ちを忘れず、自分が受けてきた恩に報いることができるよう、生活させていただきたいと願っています。

 


 

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