●あなたのこと、祈りよるけん

金光教放送センター


 福岡県北九州市八幡。かつては、日本の鉄鋼業の中心となった官営八幡製鐵所で栄え、その施設の一部は、明治日本の産業革命遺産として、世界文化遺産に登録されています。
 その八幡の町にある、金光教の教会にお参りしている、55歳の田中優一さんは、長らく出版関係の仕事をしてきました。若い頃から読書好きで、たくさんの知識を詰め込み、理論武装していたと話します。「宗教は理論的に考えてみて信じることができない」との思いを持っていました。
 30代半ば頃、漫画家のサトウサンペイさんの『ドタンバの神頼み』という本をたまたま見掛けました。サトウサンペイさんのことは、新聞の連載で知っており、「あのサンペイさんが神様のことをどう書いているのだろうか」と、勉強のつもりで読んでみました。その本には、金光教の信心をされているサトウサンペイさんの、信心で助かっていく姿が面白く描かれていました。
 当時の田中さんは、3歳になる息子の皮膚の病気がひどく、「どうにか治してあげたい」と大学病院や皮膚科を回っていました。しかし、どこに行っても、「これは治せません」と言われます。どうしたものかと悩んでいた時に、その本に出合いました。
 田中さんは以前から、仕事で八幡の町を回る中で、金光教の教会を見掛けており、「サンペイさんもあのように書いていたし、一度行ってみようか」という気になりました。
 初めてお参りし、教会の先生とお話をしました。先生からは、「お子さんの皮膚は、すぐには治らんかもしれんけど、いずれ治るように一緒に神様にお祈りしていきましょう」と言われ、田中さんも、「治るか治らんか、分からんけれども、それにとらわれず、この子を支えていこう」という気持ちになりました。
 「宗教嫌いから一転、神様にお祈りするようになるなんて、それほど息子を思う気持ちが強かったのでしょうね」と田中さんは話します。それから、子どもが成長するにつれて、症状も和らぎ、皮膚の状態も見た目には気にならないくらいになってきました。
 田中さんはお参りを続け、40歳になった頃には、「係長に昇進させてください」といつも教会でお願いしていました。いよいよ時期がきて、課長からも、「昇進は間違いない」と言われ、期待していましたが、なれませんでした。
 がっかりして先生に、「なれませんでした」と言うと先生は、「ああ良かったですね。おかげは遅い方がいいですよ」と言われます。おかげとは、神様からの助けや恩恵といった意味です。びっくりして、「何がいいんだろう」と思いました。
 それから3年が経って、やっと係長になれて、振り返ってみると、この3年間、係長になるために、多くの課題に向き合い、神様にお願いしながら、一つひとつ乗り越えていき、人間的に成長させてもらえたことに気付きました。その時初めて、「色々と経験させてもらい、遅れて昇進させてもらって良かったな」と心から思えたのでした。
 ある時先生から、「いつでも謙虚な人にならせてもらいましょう」と言われました。田中さんは、毎朝神様に、「謙虚であらせてください」とお願いし、夜には一日の反省をしました。それを続けていると、どんな人へも「さん付け」で呼ぶようになり、人それぞれが持っている良いところが見えるようになりました。さらに、素直に人を褒めることができるようになってきました。
 「毎日の信心の積み重ねで、自分が変わり、物事の受け取り方が変わってくる。とてもありがたい」と田中さんは話します。
 50代に入り、課長となった頃、急な人事異動で、職場にうつ病の方、Aさんがやってきました。Aさんは、「もう仕事はできない、職場に出て行けない、無理です」と田中さんに訴えました。
 田中さんは、Aさんに話しました。「そうか、分かった。でも私はあなたのことを祈るから、出てきてくれん? つらかろうけど、出てきてくれん? 私、絶対にあなたを守るから。おるだけでもいいから。僕は祈るけん、分かるね、あなたのことを祈りよるけん。それで神様につながるけんね。それを信用して。社員集めて、みんなに病気のこと説明して、あなたを支えようって話してもいい?」。Aさんは「はい、いいです」と言いました。
 社員を集め、「Aさんはうつ病です。出来るだけ、自分たちで判断できることは自分たちでやっていってくれるかな」と聞くと、「はい、分かりました。支えます」とみんなが言ってくれました。田中さんは、毎日、Aさんのことと職場のみんなのことを祈りました。Aさんはみんなに支えられながら、徐々に心の状態も良くなり、数年後、次の職場に異動していくことができました。
 田中さんは当時を振り返り、「Aさんはつらかっただろうけど、私のお願いを受けてくれた。社員みんなも、Aさんが色々と判断せんでいいように、助けようとみんなで相談して準備するようになった。みんなそれぞれに成長できたんですよ」と話します。
 宗教に不信感を抱いていた若い頃から、金光教に出会い、先生からの教えに日々取り組む中で、性格や仕事の向き合い方まで変わってきました。変わることができた自分自身を、驚き、喜ぶ田中さん。教会の先生がいつも自分のことを神様に祈ってくださっているのを、とてもありがたく感じています。
 祈られていることを支えに、今度は自分が、家族を始め、職場のみんなや仕事で関わる人たちのことをいつも、神様に祈りながら生活をしています。

 


 

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