シリーズ「昔むかし」
●みよの話

金光教放送センター


 昔むかし、ある山あいの村に、信心深い木こりの若い夫婦がおりました。女の子が生まれ、「みよ」と名付け可愛がっていました。
 それから数年後に男の子を授かり、「小太郎」(こたろう)と名付けました。みんなは幸せな日々を過ごしておりました。父親はますます仕事に励み、母親は小太郎を育てます。みよも弟のそばから離れず、母親が小太郎のおむつを替えている時にものぞき込んでおりますと母親が、「良いうんちが出て良かったねえ、気持ち良かっただろうね」と小太郎に語り掛けます。
 「いつもそう言うのね、どうして?」とみよが聞きますと、「あのね、うんちが出ないでお腹がふくれあがったら困るでしょう。みよだって、良いうんちの出るお腹でないと、美味しい物が食べられないでしょ?」
 みよはしばらく考えておりました。
 「おっ母さん、本当にその通りね」
 すると母親は、「だからおっ母さんはいつも小太郎のおむつを替える時、『ああ今日も元気で良いうんちやおしっこが出て、神様ありがとうございます』と、お礼を言っているのよ」
 母親が小太郎を寝かし付けてふと見ますと、汚れたおむつが見当たりません。すると、みよが神棚にさっきのおむつを乗せて、手を合わせているではありませんか。
 「みよ!? おむつを神棚にお供えしてはいけないよ」
 母親は、困惑するやら感心するやら苦笑いを浮かべました。

(ブリッジ)

 その数日後です。夕方、表の戸がバタバタと開きました。木こり仲間が父親を負ぶっています。
 「あんた、どうしたの?」
 驚いている母親に木こりの親方は、「急に木が倒れてきて、逃げ損なってけがをしてしまったんだ。
 「お父っつあん、大丈夫?」
(親方) 「今、医者に診てもらったが、半年位で治るだろうとのことだ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
 それでも母親とみよは心配です。みよは母親の手伝いを一生懸命にしました。
 しかし日が経つにつれて、母親は蓄えてきたお金が段々少なくなっていくのが気掛かりで、ある時みよを呼んで言いました。
 「おっ母さんは働きに行くことにした。昼間留守の間、みよがお父っつあんと小太郎の世話が出来るかねえ?」
 みよは「はい」と返事をしました。そしてそれから前にも増して家の手伝いをしました。

(ブリッジ)

 ある嵐の夜のことです。戸をホトホトと叩く音がしました。開けてみますと、「私は旅の商人(あきんど)で今峠を下りて来ましたが、嵐があまりにも激しいので、何とか一晩泊めて下さいませんか」と言うのです。母親はその様子がいかにも気の毒でしたので、「狭い家ですが、どうぞお入り下さい」と家に招き入れました。
 旅人は大層喜んで、何度もお礼を言いました。
 翌朝は、嵐が去ってお天道さまがキラキラと輝いております。みんなで貧しい食事をした後、旅人はお礼を言って出発しましたが、その時、荷物の中からお人形を出して、みよに、「世話になったね」と言って手渡してくれました。みよは、こんな綺麗なお人形を見たことがありません。「うれしいなあうれしいなあ」としばらくお人形を抱きしめておりましたが、ふと気付いて旅人の後を、「おじさん、おじさん」と呼びながら追い掛けました。
 旅人は立ち止まって、「どうしたんだね?」と聞きますと。
 「お願いがあります。このお人形を、弟のおむつになるような布と取り換えて下さいな。弟のおむつは私のお下がりで、今は布が傷んで困っているのです」
 「そうかそうか、それじゃあ、これを使いなさい」
 旅人は荷物の中から布地を出しました。
 「こんなに立派な布でなくても…」
 「いいんだよ、みよちゃんは本当に偉いねえ。そうだ、お父っつあんのけがの痛む所に貼る薬も上げようかね」
 そう言って、みよの頭をなでて山道を下りて行きました。
 みよは、いつまでもその後姿を見送っていました。
 「家(うち)に帰ったら、神棚にこの布と薬もお供えしよう、神様ありがとう」

 おしまい

 


 

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