VOL.2



小 公 女
バーネット 著
伊藤 整 訳

新潮社
どんな目にあっても気高い心をもつ少女

インドで育った少女セーラは、ロンドンの寄宿学校に入ることになった。
裕福で美しいセーラは、学校中の人気を集め、王女様のような暮らしをしていた。ところがある日、セーラのお父様が亡くなり、一文無しになったという知らせが届いた。

突然セーラは王女様のような暮らしから、屋根裏部屋で学校の下働きをする生活に転落してしまうのだった。慣れないことや苦しいことが次々とおそってくる。しかしセーラは誰よりも美しく気高い心を持ち続けた。
空想の力で自分を幸福にしていき、誰かをいつも思いやって、日々を楽しく過ごしてゆくのだった。
どんな目にあってもやさしくて、決してへこたれず、希望を見出す美しい心の持ち主セーラ。

この本を読んだ私は、セーラのようにお金持ちでもなければ、ぜいたくもできないけれど、どんな目にあってもセーラのようにへこたれず、気高い心をもちたいと思った。
悲しいときや苦しいとき、セーラの気高い心を思い出すことで人生を豊かにできた。
一人でも多くの人にセーラに出会って、気高い心に触れてもらいたいと思う。 (K・H)

美しい恋の物語
ちくま文学の森 1
島崎 藤村 他 著

筑摩書房
恋は変わらず

普段、現代小説や絵本ばっかり読んでいるものだから、たまには名文学にも触れておこうと思い、手に取ったのがこの本である。オムニバスなので、飽きっぽい私にも読めるだろうと、軽く考えていた。
この「ちくま 文学の森」は、安野光雅、森毅、井上ひさし、池内紀が編者となり、日本文学と外国文学とを全十五巻+別巻にまとめあげた本で、私はその中の一つ「美しい恋の物語」を選んだ。

全14話の恋物語は、奥ゆかしく、繊細だが、激しい。「隣の嫁」や「エミリーの薔薇」では、そのやるせなさに切なくなり、「肖像画」や「藤十郎の恋」では、男の人の態度に憤りさえも感じ、「ラテン語学校生」や「柳の木の下で」では、主人公を励ましてあげたくもなり、当初の軽く読めるという考えを見事に覆して、読後は昂ぶってしまい、家族に興奮気味に本の感想を話してしまった。

古典文学といっても、現代恋愛小説とはなにも変わりはしない。同じ恋の悩み方であるし、恋に恋をしている人もいるし、「ポルトガル文」(これは実話らしい)を読めば、今も昔も恋する女性は勝手なものだなと、男性は思うはず。

他にも、「心洗われる話」や、「変身ものがたり」、「賭けと人生」などがあり、一話一話が短いので、気分で読みまわしても面白いと思う。良かったら手にとって見てみてほしい。 (O・S)

「教養としての
〈まんが・アニメ〉」
講談社現代新書
大塚 英志 ササキバラ ゴウ 共著

講談社
もうサブカルチャーとは呼ばせない!

子どもの頃、娯楽と言えばマンガとテレビだった。むろん本も読んだが、昔を振り返れば、まっ先に思い浮かぶのは、名作本ではなく、圧倒的に「鉄腕アトム」や「巨人の星」や「あしたのジョー」だ。当時、土曜日の六時になると、外は明るくても男の子たちはみな遊びをやめて、テレビにかじりついていた。そう「巨人の星」が放映されていたから。

現在もマンガやアニメは同じように作られているが、テレビゲームもインターネットも携帯電話もない時代、子どもたちに与えた影響ははるかに大きかったはずだ。
私も、マンガやアニメのそばで、彼らからさまざまなことを学び取り、大きくなってきたのだ。

本書は、未来に伝えるべきマンガ・アニメを論理的な思索のもとにわかりやすく紹介している。それは一方で、社会史であるとともに、その一領域を生きた自分史にもつながっていることに気付き、思わず共感してしまう。
図書館では、あまりいい居場所を与えられていないが、いいものは名作文学に劣らず魂を揺さぶり、後世に残したいと思うものも少なくはないのである。 (O・N)

「あ・うん」
向田 邦子 著

文藝春秋
昭和の名脚本家の実力!

小さい頃からテレビをよく観ていた私は、特に映画やドラマ、アニメなどの物語を好んで観ていた。
テレビで放送されるそれらの物語の多くは、起承転結がはっきりしており、エンターテイメント性に富んだ作りになっている。そんな物語を観続けてきた私にとっては、著名な作家の純文学は、どうにも物語を楽しみきれず、義務感で読んでいるのが常である。

今回、向田邦子を読もうとしたのも有名な作家、脚本家だからという理由だけで、読し裏切られた。誰にでも起こりうる日常的な題材を扱っていながら、ぐいぐい読ませる力量は、さすが昭和を代表する脚本家である。

舞台は昭和十年代の東京、羽振りが良く二枚目の会社社長、門倉と安月給で風采の上がらない会社員、仙吉は固い絆で結ばれた親友同士。日々、なにくれとなく仙吉一家の面倒を嬉々としてみる門倉だが、彼は密かに仙吉の妻、たみに想いを寄せていた・・・、というあらすじだが、こう書くとなんだか不倫がテーマの生臭い話だと思われそうだが、そこは向田邦子、丁寧に人間ドラマを描き、人との関わりの妙を感じさせる読後感は名脚本家の実力を見せつけられたおもいだった。 (H・Y)