熊本地震第5次派遣(7/10~14)

熊本地震第5次派遣

このたびの、「熊本地震」における第5次災害派遣では、今までにない体験をすることになった。
出発の直前から、雨模様ということは天気図や予報からわかっていたが、熊本に入ると、その深刻さがすぐに分かった。熊本の中心部を流れる川が増水し、茶色く濁り、その濁流は大木をも上流から運んでくるほどで、橋桁には流されてきた木々や瓦礫がひっかかり、このまま降り続くと川が氾濫するのではないかと思わせるほどの様相を呈していた。

現地のニュースでは、50年に一度の大荒れの天気とのことで、我々の炊き出し当日が一番の荒れ模様になる予報であった。
現地に着いたときには、雨はそこまで酷くはなかったが、あれよあれよという間に、天候は大荒れになっていき、炊き出し前日の夜には、炊き出しを中止にするかどうかという判断までしなければならないような状況であった。

炊き出しを中止にすると、買い揃えた食材やなんかが全て無駄になる。1ヶ月前から楽しみにしていた被災者もガッカリすることになる。決行すれば、隊員を危険な目に遭わせるし、暴風雨の弊害を受けて、どこまで出来るのかも想像もつかなかったが、悩んだあげく決行をした。
どんなことにもおかげをいただこうと決めたが、隊長には大変気を遣っていただき、ご祈念いただいたことと思う。
結局、やはり前日の夜から大荒れで、朝に現地に着くと、周辺の川沿いの地区には避難勧告が出されており、町内放送がずっと流れていた。
「どこどこの地区の方は、避難してください、どこそこの地区の方は、避難準備をしてください」
道は川みたいになっている場所もあり、どこからともなく、瓦礫になった家々からいろんなものが流れ出している状態もあった。
しかし、最初は雨風も強かったのだが、いざ調理を始めると雨風がやむ。炊き出しが始まると、暴雨風がやむのであった。そして開始前には、雨も降る中40人くらいの方が一時間も前から行列を作ってくださっていた。

結果、うまく炊き出しも出来て、何度も通ってくれる被災者の方々と交流を深めたり、お役に立つことが出来た。
炊き出しが終わり、被災者の方々が帰った後、片付ける段になると、今度は、もう今までに体験したことのないような大雨が降ってきた。降ってくる雨水が地面を跳ね上がって、あたりが真っ白になるような大雨で、私はちょうど洗い物をしていたので、その降ってくる直接の雨で洗剤を洗い流せるほどであり、今度はかえって助かるような、そんなことでもあった。
その、バケツをひっくり返したような雨に打たれているときに思ったことがあるので、ここで紹介したい。
たびたび何度も登場する、熊本教会長の萬野先生と話すなかで、先生が私に問いかけられたことがあった。「救援隊をここまでにするには、並々のことではなかったでしょうね」と。私は、「いろんな人のお世話になって、ここまでにならせていただきましたが、常に逆境に立たされてばかりでした」と申すと、そのときに萬野先生が「先生、こんな言葉を知っていますか?」と言って教えてくださった。
その地方の諺でもあるということだが、

「よか馬は、風に向かって立つ」【その言葉の意味は、優れた馬ほど、北西風が強く海鳴りのする冬の日などは特に元気がよくて、目は輝き、いななきと共に尾を逆立てて突っ走っていく。人に例えると、困難に出合ったときにこそ、決して風に背を向けることなく、目を見開いて、胸を張って堂々と立ち向かう】
という諺があります。「その諺こそ、先生の今の姿ですね」と言ってくださったのだが、私はそんなことは到底思ってもいないことなので、そのときはよく分からなかったのだが、その炊き出しのあとの、嵐に打たれて急いで洗い物をしているときに、萬野先生がこれはすごい言葉を教えてくださったことだとわかった。
「こんなときこそ、へこたれてはいかん。いかに逆境に立たされても、いつも凛として、ご用をさせていただく、そういうことの道しるべを教えてくださったんだな。そういう人間に、そういう教師になりなさいということだったんだな」と、そのときに思うことが出来、これが教導であると思わせられた。

そのとき、周りを見ても、みんな笑顔でご用をしており、「よか馬は 風に向かって立つ」その姿を見ることができた。
結果、炊き出しのご用も無事に終えることができている。

先日、防災士の資格を取得したとお伝えしたが、そのなかで、緊急時に心がけたいことを今回も一つ紹介したいと思う。
 南海トラフ巨大地震がささやかれる今日、大震災が起こった場合の家屋の倒壊は必至であることから、倒壊家屋からの救出活動の基本を伝えたい。
 まずは、倒壊家屋に挟まれている人に声をかけて安心感を与え、取り残されている人の数を確認する。次に周囲の人に協力を求め、自分と挟まれている人の安全を確認しながら作業をする。
 救出活動をする人は、ヘルメットや軍手、厚底の靴を使用して身を守る。活動時には上方からの落下物や足場の釘、針金、ラス網(モルタル壁の下地用の網)、鉄筋による切創、踏み抜きなどに注意を払う。
 また、余震などによる建物の倒壊や救出作業中の崩壊など、二次災害に注意する。救出作業時には、活動全体を監視する人(できれば2方向以上、複数名)を置き、危険を防止する。
 現場付近では、いつどのような形で火災が発生するかわからないので、近くに水や消火器を用意する。倒壊家屋のガスの元栓やブレーカーを切れたら切る。
 救出は、「人命の危険が切迫している人」「救出作業が容易な人」を優先する。挟まれている人を無理に引き出そうとせず、障害物を取り除き、負傷者の様子や変化を見ながら行う。人命への危険が切迫している場合は、救出と並行して応急手当も行う。
長時間、太い梁などによって下肢などを挟まれている場合は、『クラッシュシンドローム』の恐れがあり、非常に危険なので、そのままの状態にして医師などを呼ぶ。救出した人は速やかに病院に搬送する。
ここで、重要なことがある。『クラッシュシンドローム』という言葉を耳にすることが少ないと思う。私も勉強を始めてから知ったことなので、ここで披瀝する。

 クラッシュシンドロームは「挫滅症候群」と言い、阪神淡路大震災では372例発生し、実にその50例が死亡に至っている。
 上記のように、倒壊した建物の下敷きになって、四肢が長時間挟まれると2つの問題が起きる。
ひとつは、直接筋肉が圧迫されて損傷すること。
もうひとつは、圧迫による血流障害で筋肉に血液が供給されなくなることである。完全に血液が遮断されると、筋肉は4~6時間で不可逆性の壊死に陥る。筋肉が壊死に陥ると筋肉細胞が破壊され、大量のカリウムが出される。この状態で圧迫が解除されると、カリウムを大量に含んだ血液が全身を巡り、最も重症の場合は心臓の拍動が止まってしまう。この状態をクラッシュシンドロームという。
瓦礫や柱、梁の下敷きになっている人のうち、四肢の圧迫を受けて数時間経過した人については、圧迫を除く前に止血帯や駆血帯(採血時に血液を採りやすいように腕を縛るもの)で圧迫し、血流を再開させないように処置しなければならない。高度に専門的な処置を要する状態なので、救急隊や医師が到着する前に行えることは、カリウムを含まない水を与えること、保温・加温することや元気づけることであり、未処置の状態で安易に四肢の圧迫を除いてはならない。
こういうことは、通常はあまり知り得ないことではあるが、知識として知っていることで、いざという時に役立つ可能性があると思う。
 前回の報告書にも記したが、防災ということが本当に大切で、この意識が高いほど災害が起こった時に怪我をする確率が低い、強いて言えば生存確率が高いと思う。

以上、「熊本地震」における第5次災害派遣の報告とさせていただきます。
 教区の先生方はじめ皆様には、お祈り添え、多大なるご支援を賜り、本当にありがとうございます。教区を代表して、救援活動に参加させていただいております。また、事故や怪我もなく、おかげをいただいておりますこと、御礼を申し上げます。

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