東北派遣第34次派遣(2019/3/8~14)

東北派遣第34次派遣(2019/3/8~14)

○全体をとおして

 東日本大震災から8年を迎えた。本来ならば1年に2度くらい訪問したいと願っていたが、昨年は日本の各所で災害が発生し、どうしても事情が許さなかったため1年ぶりの訪問となった。

 出発当日は大荒れの予報であったが、思ったよりも好天に恵まれて無事に岩手県まで到着することができた。途中、会津若松にて藤井浩志隊員(福島県・岩代郡山教会)と合流。藤井隊員は少し前に岩代郡山教会の後継として橋長孝三郎師に師事している。橋長師たっての願いで今回参加した。

 田老町(岩手県・宮古市)では、数十軒の孤立集落を訪問するが、なかでも印象的だったのは、林本商店が3月いっぱいで閉店するということであった。
 これまで報告書で何度もふれてきたが、店主のA氏(ご高齢女性)は東日本大震災後、この地域でいち早く「林本商店」を復活させた。この商店は田老町復興のシンボルでもあり、軒並み商店が流されてしまったこの地域の方からは「林本商店さんで買い物が出来るから本当に助かる」と頼られる存在であっただけに非常に残念でならない。

 閉店の理由を伺うと、「数か月前に肺がんが見つかり、手術を受けて先日退院してきたが、残念ながら、もうここまでだ」ということであった。発災直後、「お店を復興させたいが全く資材がなくて、どこに行っても棚すら買うことが出来ない」と聞き、炊き出しに使おうと教会から持ち出した長机を数本お役に立てていただいたことを思いだす。あれから8年経ち、スーパーマンのようだったこの方も歳や病気には敵わないと思うと切なくなったが、ここまで地域のためにも貢献なさり非常にありがたいことであった。こののちはゆっくりと過ごしていただけるようご祈念したい。

 岩手県から宮城県に向かう海岸沿いの道も復興道路が開通しつつあり、前回に比べてかなり早く移動が出来るようになってきた。
3月11日は、小渕浜(宮城県・石巻市)に向かったが、大荒れで台風並みであった。

 夏祭りなどでもお世話になった「割烹民宿めぐろ」を訪ねると、大将がやけに様子がおかしくて「何かあったのだな」とすぐに分かった。
「お久しぶりですが、いかがですか」と尋ねると、大将は涙をぬぐって、「実は、うちのが(女将さんが)大動脈瘤乖離という病気にかかって、もう少しで危ないところだったんだ」ということで、女将さんの体が冷たくなってきたときの救急搬送から緊急手術・退院までの流れを話してくださった。
 ご存知の方も多いと思うが、大動脈瘤乖離という病気は非常に怖い病気で死亡率も高く、後遺障害も残りやすい病気の一つである。
しかし女将さんに関しては、奇跡的に一命を取り留めただけでなく、後遺障害も残っていないというおかげをいただかれた。
私たちには、「生かされたんだー。ほんと、生かされたんだー」と何度も笑顔でおっしゃり、私たちも胸をなでおろすことができた。
この地区では、昨年の5月頃に、仮設住宅から全員退去することができ、このたび訪問すると、仮設住宅は全て取り払われたのちに整地されていて跡形もなくなっていた。

 復興住宅は北地区と南地区に分かれ、道路でつながって行き来できるようになっている。北地区は自分で家を建てられた人、南地区は復興住宅の公営住宅となるが、隣の家と繋がっていた仮設住宅から独立した復興住宅に移ると、今度は近所付き合いもこれまでのようにはいかないようでコミュニティーが不足して孤独になる人が出ていると伺った。
 こんなときこそ、また「炊き出し」でお役に立てると思うので、今後、隊で相談して出来ればチャレンジしたいと思う。

 そして今年は岩手県から宮城県にかけて全体的にワカメが不漁であった。昨年11月に種付けをしたワカメが全滅した地域も多くあった。
小渕浜の網元のお宅を訪ねた際、「今年はワカメはダメだったのですね?」と伺うと、「いやいや、そうじゃないんだよ。どこもダメだったみたいだけど、この小渕浜だけは良かったんだよ。そのぶん値段が跳ね上がって昨年の二倍近いんだ。それでも売ってほしいと全国から注文があるんだ」とおっしゃった。
 手放しに喜ぶことは決して出来ないが、全体的にはダメであったワカメ漁も、せめて私たちが支援する小渕浜だけでも豊漁でよかった。
最後に、やはりこの3月11日だけは、全国的にもそうかもしれないが東北の地においては特別な日であり、漁業は休業となってどうしても暗い雰囲気にならざるを得ない。

 東日本大震災が遠い過去の話になり、既に終わったもの、片付いたことと思われがちであるが、そこに住んでいる人々にとっては復興途上が今の現実であり、辛い思いや不安を抱えての毎日がある。

 誰かに聞いてほしい、誰かと話したい、誰かに励ましてほしい。。。

 そんなときにこそ、私たちが必要とされるところに行って勇気づけることが出来る。辛い心の中を知っていてこそ息の長い活動が出来てきていると思う。

 先日の報告書に「グリーフケア」ということを紹介しているが、私たちの活動は紆余曲折があって、今では自然とそういうことが出来てきているように思える。これまでもそうしてきたように、ここからもそうして人のお役に立っていきたい。
なんとか少しづつでも立ち直っていってもらいたいと願い、祈念したいと思う。

 以上、簡単ではありますが「東日本大震災」における第34次災害派遣の報告とさせていただきます。
 教区の先生方をはじめ、信奉者のみなさまには、いつも暖かい励ましのお言葉やたくさんのご支援、お祈り添えをいただき、このたびも事故や怪我もなく活動を終えさせていただくことができました。ありがとうございました。
 このうえとも、お祈り添えを賜りますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

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